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acneをプレゼント

いくら獲物が豊富でも、何時間かすれば腐ってしまう。 冷蔵庫もコンビニも電子レンジもないのだから、来る日も来る日も、朝起きたら食料を集めに行くしかなかった。

行かないのは、行っても収穫が期待できない時期だけだ。 たとえ冷蔵庫が一杯でも、あなたが身体を動かさなければ、身体は食糧不足を感じ取って警戒信号を発し、脳と肉体を衰弱モードに切り替える。
こうして「老化H衰え」が始まる。 だんだん活力がなくなり、無気力になる。
新陳代謝が落ちているから、余分な食べ物はすべて脂肪として蓄えられる。 免疫系も半分寝ているから病気になりやすい。
使わないから筋肉は減り、関節は固くなる。 その昔、寒い冬に洞窟でうずくまり、震えながらひたすら春を待ったように。
あなたの身体は、もう衰弱モードに入っているかもしれない。 それは私たちの意思とは無関係に始まるし、いつ始まるかわからない。
身体を動かさなければ、運動しなければ、今すぐにも衰弱信号が送られてくる。 春が来て(あるいは身体を動かして)元気信号が送られないかぎり、筋肉も骨も脳も日なたのアイスクリームのように溶けていく。
これがクリスの言う「容赦ない潮の流れ」だ。 しかし、幸いなことに衰弱のプロセスは急には進まない。
だから適度な運動をして「春」を感じさせてやれば、ふたたび衰弱モードから成長モードへ切り替わるはずだ。 もちろん、初めから衰弱モードに入らないことが肝心で、そのためには毎日何かをして身体を動かし、「今は春なんだ」と身体に教えてやる必要がある。
ここが本書の要だ。 難しいことではないが、継続が大事だ。

繰り返すが、衰えと生物学的な加齢は別物だ。 衰えは、現代の座りがちな生活習慣が招くもの。
それは昼間からテレビの前に座っていることから始まる。 歩いて買い物に行かず、通販ですべて済ませてしまうことから始まる。
フアストアード店で、ブライドポテトや砂糖たっぷりのソフトドリンクを注文することから始まる。 娘の家を訪ねるかわりに電子メルで用件をすますことから始まる。
家にひきこもり一人ぼっちでいることから始まる。 衰えは、人生に見切りをつけ、関わらないことから始まる。
けれども、ここに紹介した進化のメカニズムをうまく使えば、衰えは止められる。 止められないまでも、遅らせることはできる。
加齢は自然の営みだが、衰えを招くのはあなただ。 脳が発する成長信号むろん、ここでは衰えの冬ではなく、元気な春を選んだとして話を進める。

では、どうすれば五O問近の身体に「人生の春が来た」と伝えることができるか。 運動を続けていれば、ある程度の信号は自動的に筋肉や組織に伝わる。
しかし脳にも的確に伝わってもらわないと困る。 老化H衰えを防ぐには脳が働かなければいけない。
ただし、ここで言う脳は「思考脳」ではなく、何百万年も前にできた「身体脳」である。 身体脳には耳もないし口もない、目も見えない。
ひたすら身体から送られてくる化学的な刺激に反応するだけだ。 頭蓋骨の内部はいつも暗く、湿っていて、ちょっと塩辛く、温度はだいたい三七度。
身体脳は、人が態度と行動で一不すことだけを理解する。 身体脳と身体は、やり直しのきかない厳しい世界で進化した。
そのメカニズムは太陽のまわりを廻る地球の軌道と同じくらい古くからある。 身体脳が記憶しているのは、何百万年も前に私たちが生きていた生活環境だ。
それを前提に、生き残るためにベストな信号を送ってくる。 今は冷蔵庫があるんだと叫んでも、身体脳には聞こえない。
身体脳は、自分がベストと信じる状態に身体を保とうとする。 あなたの意思とは無関係だ。
病気は違う。 病気は誰が選ぶものでもない。
しかし健康は選べる。 あなたの身体脳が健康を、人生の春を選ぶように仕向ければいい。

うまくできたら素晴らしい。 しかも単純なルールさえ理解すれば、けつこう簡単にできるのだ。
身体脳をコントロールするには、まずその出自に目を向ければいい。 地球上で生命が活動を始めたのは三五億年前で、藻や酵母が、その次にはバクテリアが私たちの直接の祖先となった。
バクテリアの子孫であることを恥じる必要はない。 むしろ畏敬し、感謝すべきことだ。
人間の系譜は三五億年前に遡り、その一瞬一瞬が私たちの身体と脳の完成に費やされてきた。 無駄な時間は一秒もなく、無駄な進化はひとつもなかった。
この三五億年の歴史を忘れないでほしい。 情報化時代私たちの基礎代謝のメカニズムの半分くらいはバクテリアから引き継がれたもので、何万年も変わらずに、きちんと働いている。

酵母や藻もそうだが、こうした単細胞生物では細胞の一つひとつが生存競争を繰り広げていた。 しかし進化した生命体は、ミミズであれ人間であれ、協調して機能する多細胞からなる。
当然、多細胞は単細胞よりも強い。 個人よりも組織が強いのと同じだ。
そこには個人にはない情報の共有(コミュニケーション)があるからだ。 単純な生命体は、細胞聞に化学物質を流すことで情報を伝えている。
これが嘆覚(人間の最も原始的の始まりである。 だから朝のコーヒーや味噌汁の匂いが身体を目覚めさせる。
けれども細胞な感覚だ)の数が増えるにつれて、すべてをうまく機能させるには多くの情報が必要になる。 人が複雑で、パクテリアに比べたらすごく巨大な身体を進化させる過程で、ホルモンと呼ばれる血中化学物質と、それに反応する神経ネットワークができあがった。
そして進化につれてホルモンの種類は増え、神経のネットワークは複雑になっていった。 おかげで私たちは、ほかの誰よりも深く生命の可能性を追求できるようになった。
現在、人は山ほどの情報に埋もれている。 何十億もの細胞があり、その一つひとつが極めて特殊な意味を持つ化学的メッセージを隣の細胞に伝えている。
細胞の一つひとつが神経とホルモン受容体の豊富なネットワークを持ち、何百万もの信号が常に身体中を飛び交っている。 世界中の電話とインターネツトで行き交う情報量も、身体の中の情報量に比べれば微々たるものだろう。
これは比鳴ではない。 人は受胎したときから死ぬまで、毎日、一日中、体内で何兆もの信号を発している。

来る年も来る年も、昼も夜も、絶え間なく身体に情報を送信している。 やめることはないし、やめられない。
そしてすべての細胞が、身体と脳のあらゆる部分が、これらの情報に耳を傾けている。 身体が発する一言ひとことに注意を払い、すべての指令に従っている。
なかには、あなたが知ったら身震いするような情報も多いのだが。 だいたい五億年前、私たちの遠い祖先の無脊椎動物(カタツムリやクラゲのようなもの)が、アドレナリンやコカインやモルヒネとよく似た化学物質である神経ホルモンと脳内化学物質のほとんどを作り出した。
今も私たちはそれを使っている。 それは私たち人類が発明したものではない、進化の途中で、都合よく手に入れたものだ。
この本を読んでいるあなたは、ミミズやカタツムリと同じ化学物質とホルモンで身体と神経系統を制御している。 ミミズの時代からさらに二億年を経て、ようやく小さな、原初の脳ができた。
魚類の誕生である。 たとえばサケやマグロの脳、いわゆる身体脳は人間のそれと同じだ。
いや、正確に言えば私たち人間がサケやマグロの身体脳を持っている。


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